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11/26/2009 心の断片220「手榴弾」 「手榴弾」 あの日 校庭に埋めた手榴弾は どこへいったのだろう 土を蹴って追い払った猫は どこへいったのだろう 見せ物小屋の美少女 静かに狂った青年は どこへいったのだろう 毒々しい煙を吐いた煙突 講堂の屋根瓦 水たまりに浮かぶ虹色は どこへいったのだろう あの日 資材置き場の迷路で眺めた雲 みんなみんな どこへいってしまったのだろう ★ホームページに戻る 11/22/2009 心の断片219「夜の記憶」 「夜の記憶」 三日月の夜は 人歩く 後ろ姿は群青の ふたりひとりと 月の夜 風吹く夜は 家の中 明かり火鉢に よりそいて 両手ならべて かざす影 雨降る夜は 窓の外 道行く人は 急ぎ足 かすかに残る 息づかい 最後の夜は 胸の内 慣れ親しんだ 天井の ひとつひとつの 節模様 ★ホームページに戻る 11/19/2009 心の断片218「一緒に」 「一緒に」 同じ時代に生きていることを喜ぼう 同じ星に生きていることを喜ぼう 同じ言葉を話し 同じ空気を吸い 同じ大地に立ち 同じことを学び 同じことを悩み 同じことをして 同じように死んでいくことを喜ぼう この同族の うねりの中に かき抱かれ 身を委ねたことをなぜ悔いるのか 一緒に生きることの恥ずかしさ 一緒に生きることの辛さ 一緒に生きることのおもしろさ そうした諸々の一緒を 一つ一つブレーキに仕立て上げねば ひとり暴走してしまうではないか この世を破壊してしまうではないか ★ホームページに戻る 11/17/2009 心の断片217「わが逃走のスペクトラム」 「わが逃走のスペクトラム」 溝が深まったら 橋を渡せばよい 渡せなければ 溝のこちらを素敵にすればよい こちらを素敵にしておいて 溝の縁に壁を拵えよう そうしておいてさっさと別のところへ 逃走すればよい 壁にぶつかったら 迂回すればよい 迂回できなければ 穴をあければよい あけられなければ 乗り越えればよい それが駄目なら 壁のこちらに溝を掘ろう そして溝の縁に壁を拵えよう 同じだけの壁を拵えたら さっさと別のところへ また逃走すればよい あらゆるところに逃走し この世を溝と壁の迷宮に 仕立て上げればよい 迷い込んだ者たちとの 無限の出会いと 無限の可能性を楽しめばよい 逃走が創造で 創造が逃走 無節操な生き方よ だが 人生のなんたるかは どうでもよいような つまらぬことだった そのつまらぬ大事さとは別個の 次の段階の真実をまだ これっぽちも確かめられぬまま 擬似関係に埋もれた己と その己を絡め取った世の中の 化けの皮を 一枚一枚 ピンセットでそろそろと剥がしてゆく 恐怖とやりきれなさ この緊張感がたまらないのは いったいどうしてだ ★ホームページに戻る 11/15/2009 心の断片216「捨てたもの」 「捨てたもの」 気がつけば この道を かけていた 誰もいない道を 何も疑わず かけてきた 自分の足音から 逃げるように かけてかけて 知らないうちに 積み上げてきたものは 振り返ることもなく ひとつひとつ いろいろな理由をつけて 捨ててきたものに違いない それをひとつひとつ もとへ返してやろうというのだ もとどおりにはならないが それなしに 新しい道など許されるはずがない ★ホームページに戻る 10/28/2009 心の断片215「頼れる仲間」 「頼れる仲間」 この靴はいてどこでも行くぞ 世の中の瓦礫 死体ではない死体 生きた地雷をも乗り越えるぞ このナイフはどこまでも鋭いぞ 迫る肉 楯突く骨 不屈の心まで削ぎ落とすぞ この地図はどこまでもしゃべるぞ 岩山の目印 秘密の扉 隠匿された宝を暴き出すぞ このバイクはどこでも走るぞ ぬかるむ沼地 あばれる木々の根の上も 無理な場所なら好んで走るぞ このジャケットは死んでもあきらめないぞ 丈夫な靴を履き 大小のナイフを仕込んだら 地獄の地図をポケットに 道なき道をどうにも突っ走るぞ ★ホームページに戻る 10/27/2009 心の断片214「めぐり」 「めぐり」 この不条理をどうしよう 心の痛みをどうしよう 割に合わぬ我慢に 意味はない 八割解決したら かわりの誰かが 味わえばよい お互い様の論理 感謝の方程式だ 巡りが滞った分の 不幸せは自己責任 我慢の範囲だ ★ホームページに戻る 10/26/2009 心の断片213「どこにいくの」 「どこにいくの」 どこへいくにも かわいい靴で すてきな速さで 歩いたね 麦わら帽子に 風受けながら 小さな花を 見つけては摘む いたずらっ子の きみがいた 日暮れても 尽きない話 窓辺の子猫 隣のラジオ 緩やかな時間 やわらかな空気 緩やかな時間 いつかリボンも どこかにしまい かかとの音がする すきのない靴 急に大人の 君がいた ★ホームページに戻る 10/24/2009 心の断片212「存在」 「存在」 空よりも星多き空 埋め尽くす埋め尽くす 山の上 里の上に 覆いかぶさる天蓋とは この永遠の光の 輝きの大回転 木々を照らし 夜の世界をつくる 幻の時間 薄紫の大気 存在とはこのことなりと 息をのむ ★ホームページに戻る 心の断片211「若者難民」 「若者難民」 口笛を聞かない 鋭く明るく空気を切り裂く 若者の口笛を聞かない 澄みわたる空の下 若者の清らかな 笑顔を見ない 無垢の時代を失った 人間の原点の崩壊 自己設計の喪失 何にも増して愚かしい賢さ ちぐはぐの階段 孤独の正体 見て見ぬふりの ただ歪んだ唇からは あの澄みわたる口笛も 清く明るい穏やかな笑顔も どうにも生まれることはない 当世風に扮装しなくてはならない 当世風に語らねばならない 自覚症状なき若者難民は目覚めるか 夕暮れたそがれ木の葉舞う 点灯し始めた水銀灯 凍えて誰もいなくなる前に そっと小さく吹いてみる僕の口笛 ★ホームページに戻る 10/23/2009 心の断片210「少年時代」10/20/2009 心の断片209「新聞広告」 「新聞広告」 色とりどりの広告に めまい 目立てばよい 極彩色の狂気 聞いたような言葉の羅列が ぼくを寸断する こころまで 木っ端微塵のぼくは 新聞紙に倒れ込むと そのまま包まれて ダスターシュートを落ちてゆく ほこりと寒さ湿気に耐えながら 僕は新聞広告と仲良くなる算段するのだが ぱりぱりとどこまでも薄い広告が こよりのように細くよじれて 僕の耳から鼻からねじ込まれてくる 物たちの反乱だ ドタバタと足音だけが勇ましいわけじゃない 人間とはちがう 謙虚な反乱だ どこまでも優しく どこまでも静かな 決して終わらない 誰も知らない反乱だ ★ホームページに戻る 10/18/2009 心の断片208「はったり大事」 「はったり」のそのまた裏の「はったり」ぐらいになると、自分でも忘れてしまう。いつの間にか、だからそれが自分自身だ。自分で描いた絵に自分が同化するということはよくあることだ。 自分は自分という自信。こうした誰も否定できないことを自信の土台にするという計算高さは自分を守るためのものでもある。 確かに自分は自分自身だ。そんな細枝のような自信も、繰り返しコピーにコピーを重ね、幻の力を重ね撮りして束ねれば、どうやら人となりとやらを充分に支えるらしい。 だけど、そうしたうざうざとした小さなはったりやごまかしだからこそ、自分の意志の反映であり続ける。 いじこましく支えられた大量生産プラモデルでは何の魅力もないかもしれないが、もとの支えが細いのだから、中身がないのは好都合の軽さだ。 これは世間が認めるものを求めて止まない精一杯のポーズどりだ。がんじがらめの路線のうえの本当はどうしたらよいかわからない不自由な存在だ。進んでいるつもりの立ち往生での背伸び合いだ。だが、こんな暇つぶしの程度の争いでは何の満足がいくものか。 一度バイクに乗り換えて線路から下りるという手もある。行きたいところへ、真実求めて冒険の旅に出かけないか。道なきところにガソリンスタンドはない。だから、燃料タンクいっぱいのガソリン分の距離限定の旅だ。 世の中、道だけでできているんじゃない。道を外れたところにものがある。もちろん玉石混淆だ。道に落ちているものや道筋に立ち並んでいるもの。そうした手に入りやすいものは誰かの思惑の産物だ。 そんなものばかりあさっていれば、勘も狂い、生き方や考え方もねじ曲げられ、頭もおかしくなるというものだ。もっとも道を外れたら、誰も守っちゃくれない。 帰ってこられるかどうか、神を信じるなら神にきくことだな。神すら信じないということは、他に何を信じるんだい。 そうだ。信じる者たちと一緒に旅立てばよい。それなら安心だ。そういうことだ。信じるというのもひとつのはったりだったな。道を進むことが目的じゃなくて、道はもとから手段だったはずだ。どの道を通ろうと、どんな道を切りひらこうと、それは好き勝手でよかったはずだ。 しかし、道にも定員がある。吊り橋に定員があるのと同じだ。すると、好き勝手というわけにはいかなくなる。そうなると、特定の道を進むことが目的となってしまう。まあ、それでも構わない。ただし、本物を見つける旅へのエネルギーは使い果たしてしまわないように気をつけよう。 そろそろ合理的で謙虚なはったりというものを考えて自分を強化しないといけないな。 ★ホームページに戻る 10/17/2009 心の断片206「キーワード」 「キーワード」 生きるだの 死ぬだの どうでもいいことを 真剣に悩む暇などない どう生きるだの どう死ぬだのと どうでもいいことを 真剣に考える暇などない どう生きるべきだの どう死ぬべきだのと 真剣に論ずる暇などない 何か決めたことに向かって ひたすらに 事をなし続ける ただそれだけのことじゃないか そのための問題を 解決していくだけのことじゃないか 解決しなければ解決するまで がんばるしかないじゃないか ことごとく失敗しても 誰かに託せばいいじゃないか 子供たち未来人にお話ししよう 祈りのキーワードを伝えよう 時代をこえて いつか実現するための 見えない起爆剤だ 千年あとのすごい世界に 期待しよう 平安人が夢見たように 今の世界がやってきたように ★ホームページに戻る 10/14/2009 心の断片205「パラダイス」 「パラダイス」 恐れ 不安 悲しみ 孤独 憂鬱な毎日 そうしたくだらないものに さいなまれる原因は一つ 暇のもてあましに他ならない どんなに忙しくても そいつは暇なのだ 恐れが恐れをよび 不安が不安をよぶ 悲しみの鎧に膝は砕かれ 孤独は衝動的な無軌道さに走っては 無意味に何度も失速するばかりだ 思わず何かにひるんで 人間としての行動を失ったとき 人間としての価値を失う 魂が凍てつき 息は絶え 心も止まってよどみ出す 憂鬱の鉛マントは 幾重にも幾重にも 細い骨々に巻きつき 最後のとどめ 粗末な十字架が 胸の奥までさしこまれる 暇を求めながら 暇に裏切られ 人生の大方を汚してしまうのだ 愛すべき野心 途方もないプロジェクト そうしたものにかかわっている限り 毎日の輝きが色褪せることはない 恐れも不安もすべてが美しく輝く 豪華絢爛 パラダイスの光だ ★ホームページに戻る 10/13/2009 心の断片204「罪人」 「罪人」 罪人のつぶやきを 聞いたことがあるか 悔恨の言葉に続く 沈黙の言葉を聞いたことがあるか すがって許しを請う目の奥で 何かがゆらゆらとよぎるのを 見たことがあるか 人差し指が震えるのを 右目が肩越しの風景に置かれているのを ネクタイの結び目がおかしいのを その罪状を何度も何度も口ずさむ ことごとく歪んだ背中を 耳の形の異なりを ★ホームページに戻る 10/10/2009 心の断片203「呪いの地」 「呪いの地」 この不幸の満潮に 苦悩の帆柱押し立てる たった一つの水樽に 破れかぶれの命を預け 悔恨渦巻く海原へ やむにやまれぬ船出する 舟板腐れるその前に 帆綱ちぎれるその前に 探し出そうぞ新天地 遥か緑の雲塊 水平線の彼方 稲妻逆巻く呪いの地に 今から 丸腰で 押しかけようというのだ これまでそうしてきたように ★ホームページに戻る 10/8/2009 心の断片202「突然思い出すこと」 「突然思い出すこと」 草むらでカマキリと 初めて対決したときのこと 塾に行っていないのは僕だけだと 初めて知ったときのこと アイスクリームを 初めて食べたときのこと したたるような夕日が美しいと 初めて感じたときのこと まぶしい朝日に勇気を 初めてもらったときのこと 自分の意味のない孤独に 初めて悲しくなったときのこと 不可侵の憧れの人に 初めて声をかけられたときのこと インチキ玩具の物売りに 初めて叱られたときのこと 靄かかる山頂のご老人に 初めて声をかけたときのこと 誰もいない薄暗い部屋で 初めて一人目覚めたときのこと 知らない街の知らない道で 初めて空を見上げたときのこと 車に轢かれて死んだばかりの猫を 初めて見てしまったときのこと 雨のグランドの水たまりをなぜか 初めて渡り歩いたときのこと 僕をうろ覚えの恩師を 初めてガン病棟に見舞ったときのこと ブランコゆする足にとまった虫の名を聞き 初めてそれが蚊だと知らされたときのこと おしゃべり渦巻く満員バスで下校中 初めて好きだよと言われたときのこと 背伸びしてはし使い 初めて骨を拾ったときのこと 一か月の小遣いをはたいて 初めて本を買ったときのこと 瓦屋根に寝ころんで寒空に 初めて星座を探したときのこと 祖父に連れられて 初めて映画を見に行ったときのこと 祖母に連れられて 初めてお墓参りに行ったときのこと 父に連れられて 初めて釣りに行ったときのこと 母に連れられて 初めて変電所に行ったときのこと カミソリをカミソリと知らず遊んでいるうち 初めて血の正体を見たときのこと 雨漏りの講堂入学式で 初めて雨に濡れたときのこと たどたどしい子供の声を 初めて電話で聞いたときのこと 怪我や病気で見せる笑顔が 初めて親への心遣いだと気づいたときのこと 絶望や希望やその他すべてのものが 初めて作りものだとわかったときのこと はれがましく 初めてネクタイを締めたときのこと デバートで 初めて迷子になったときのこと 下宿部屋で 初めてネズミと対決したときのこと ★ホームページに戻る 10/4/2009 心の断片201「巡礼」「巡礼」 潮風にさそわれ 僕は車を走らせる 沢の流れによばれて 僕は駅に向かう 海では 時がただ過ぎるのを じっと待つ人々を見た 山では もくもくと汗流す 修行僧のような人々を見た 口元だけの笑い顔 知ってる言葉を並べただけの おそらく昨日と同じおしゃべり こんな所でも 剥がれかけたペンキの看板 取り付け金具の緩みが 錆びたような秒を刻んでいるのだ 僕と同じ僕たちがそこにはいた 見たこともない僕を 見たこともない僕たちが見る うなり声のかわりに さわやかな挨拶を交わし 身構えるかわりに 会釈する 来てはいけないところへの いてはいけない人々の 儀式としての巡礼だ ★ホームページに戻る |
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