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    14-6-2009

    幻想8「アリバイの海」

     アリバイが多いのも困る。どうも僕には二人ほど別の僕がいるようなのだが、それは困ったことなのだ。ミッキーのように活動しているのは一人(一匹)だけということになっているのか、それともそれぞれ何の連携もなく、ばらばらに活動しているのかわからない。少なくとも僕には何の連絡もない。こんなことが公になれば、もちろん、関係者だけのパニックでは終わらない。
     もし、僕が犯罪に巻き込まれたとき、警察はアリバイを確認するだろう。それが問題なのだ。仮に、何人かいる僕がミッキーのように活動時間帯を分割してそれぞれ担当していれば、比較的問題は起こりにくい。しかし、十分に連携をとって活動しなければ、出現する地理的なつなぎが悪く、ワープでもしたのかと思われるような事態を演出する結果になってしまうこともあるだろう。
     これは警察に不審な行動として記録されるに違いない。裁判では、捜査結果の信憑性が問われることになり、幾分有利になるかもしれないが、狡猾な検察官により、偽装工作を疑われることになる可能性もあるから油断できない。
     ただ、僕と他の僕たちとは連携が取れていないことは確かなのだから、僕だけが地理的に不自然な出現をすることになる可能性があり、僕自体の現実のアリバイが架空のものであるという結論になる危険性もある。すると、連携を取り合っている他の僕たちの思う壺だ。僕だけが不審な動きをしているか、僕の証言が嘘ということになり、圧倒的に不利になる。他の僕たちが僕を陥れることは、少し準備をすれば可能であるように思う。これは恐ろしいことだ。
     では、すべての僕がそれぞれの存在も知らず、したがって何の連携も取らずにばらばらに活動していたとしよう。この状態だと、ニアミスが起こる可能性が生じる。お互いに顔見知り(?)か、片方がその存在を知っているという状態ならば、それとなく離れていき、周囲の人々に混乱を起こさせないですむように工夫できるからよい。
     しかし、公衆の面前でばったり同じ人物が顔合わせをしてしまった場合、周囲が混乱に陥ることになる。もっとも、機転を利かせてお互いに「双子です」とか「いとこです」と言い切ってしまえばその場はとりあえずしのぐことができるだろう。
     話を戻すが、僕たちがどのようなつながりを持っているか、あるいはもっていないかは別として、警察は僕のアリバイが複数種類あることにやがて気づくだろう。ここからが本当に面倒なことになる。もしかするとアリバイのない僕も混じっているかもしれないのだ。ありすぎるアリバイが、僕の身を危険にさらすことになるかもしれない。下手なアリバイ工作を組織的に行ったと評価されかねないからだ。アリバイのない僕のほうが自然な存在として記録されればよいのだが、問題は僕自身が警察の管理下にあるのか、僕以外の僕たちのうちの一人が警察の管理下にあるのかということだ。
     最も困るのは、ほかの僕が犯した犯罪を僕自身が責任を負うという場合だ。僕に執行猶予がついている場合、その期間にほかの僕が再犯(?)すれば僕としては大問題だ。
     この厄介な問題に対する策をいくつか挙げてみよう。
    ①ほかの僕たちを探し出して処分すること。
     オリジナルが既に死亡いていれば、コピーである他の僕を同じくコピーである僕が処分によって僕が消滅するという危険性はきわめて低くなる。これは僕がオリジナルではないことが前提だ。しかし、コピーが死亡したことがオリジナルにも影響を与えるという関係にあるかもしれない。これは完全に否定しきれない。そもそもこんなことは本来あるはずのないことだからだ。あるはずのないことに常識は通用しないと判断すべきだろう。
    ②ほかの僕たちを探し出して連携し、互いの存在の矛盾を周囲にさらさぬようにすること。
     互いに会わないように別々の国に住むことにし、ネットで連絡を取り合うようにする。
     僕以外の僕たちはどのように名のっているのだろう。連続する生活実態はあるのだろうか。同じ親から生まれたのだろうか。最初から大人だったのだろうか。そもそも何のために複数の僕が必要だったのだろうか。特段の意味はないのだろうか。増殖しているのだろうか。必要に応じて加減されるのだろうか。
     たくさんの僕がこの地球上でアリバイの海を築き上げているのは間違いない。それは意味のないアリバイだ。しかし、それがいつアリバイとして有効なものになったり、逆アリバイとして不利なものになっていくのかはわからない。自分の意のままにならぬゆえにひたすらに恐ろしいのだ。

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