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    1/14/2007

    怪しい広辞苑78「第四版96ページ・阿波丸事件」

     阿波丸事件の謎。第四版96ページ「阿波丸事件」の説明。広辞苑第六版ではどうなっているのだろう。
     日本人にとって忘れることができない事件の説明に使われた語句が「広辞苑第四版」と「大辞林第三版」とでは異なる。双方とも、この国の代表的な辞書なのだから何とかしてほしい。
     広辞苑第四版では「太平洋戦争で連合国側から安全を保証されていた救恤品輸送船の阿波丸が一九四五年四月一日台湾海峡で米潜水艦に撃沈され、乗船客二千人以上が死亡した事件。米政府は違法性を認めたが、四九年日本は損害賠償請求権を放棄。」
     大辞林第三版では、「第二次大戦中の一九四五年(昭和二〇)四月。連合国軍から安全を保障されて、連合国軍捕虜への救済品を輸送する任務を終え帰航中の日本船阿波丸が、台湾沖でアメリカ潜水艦により撃沈された事件。アメリカ政府はその違法性を認めたが、四九年日本政府は損害賠償請求権を放棄した。」
     ちなみにネットの大辞泉では、「 第二次大戦末期の昭和20年(1945)4月、連合国軍の安全の保障下に、日本占領地域の捕虜・抑留者への救済品輸送に当たっていた阿波丸が、帰路に台湾海峡で米国の潜水艦に撃沈された事件。」とある。
     犠牲者が飛び抜けて多いことと事件自体の謎の多さ、そして、事件後の奇妙な展開において世界の海難事故の中では群を抜いている「阿波丸事件」 だが、ここは辞書の怪しさだけに絞って次の点を指摘しておくにとどめよう。
     広辞苑第四版では「安全を保証されて」とある。それに対して大辞林第三版では「安全を保障されて」とある。中学校の国語のテストに出てきそうな問題だ。多数決だと、大辞泉も入れて、二対一で広辞苑の負けとなる。
     「保証」は「うけあう」ことで、「保障」は「まもる」ことだから、「安全をうけあう」ということができる状態なら、広辞苑の勝ちなのだが、どうだろう。
     戦争中なのだから、安全であることを前提とし、それを保証するなどということはできないのではないという立場からは、保障が正しいということになる。これが現実的な感覚だろうと僕は思う。もし、保証なら、どう保証してくれたのだろう。保証したのに撃沈されたのだから、保証書に相当する者があったかどうか分からないけれど、それに対する手当がなされなくてはいけない。それはいっさいなかったのだから、結果としては保証されていなかったことになる。しかし、意思の上で保証したと言い張るかもしれない。もしそうなら、ずいぶんと無責任な保証だ。何とかしようと思ったけれど、事情でやめたということに他ならない。アメリカの本性というよりも、戦勝国の特権とでも言った方が通りがよさそうだ。保証だとするとこういう事になってしまう。
     一方、保障ならどうか。守るのだから、当然安全が犯されるということが前提だ。安全が犯されるのを守るということだ。この場合は何によって守るのか。阿波丸を攻撃してはならないという連絡の徹底と、監視だ。恐らく連絡の徹底はなされたはずだ。
     しかし、命令をどれだけの重きをもって受け取るかは受け手による。さらに、それがどれだけ実行されるかというのは、また別の問題となってくる。戦争中なのだから、何が起こるか分からない。こうなると、安全を保障しようというという感覚の方が、保証という楽観的な感覚よりも道理のようにも思われる。
     当時の通訳または翻訳担当者、あるいは記述責任者が日本語に直すとき、保障と書くべきところを間違えて保証と書いてしまった。あるいは、その逆のことが起こった。そこで連合国側と日本側に意識の差が生まれたなどということがもしあったと想像すると少し怖くなってくる。
     連合国側の捕虜のための任務を終えた後の撃沈なので、計画的撃沈なのか。日本側が、阿波丸で任務を終えた後、便乗乗船と便乗輸送をするのは当然想定されたことで、これが戦局を長引かせる事につながると考えるのが自然だからだ。
     もちろん事故だったとの見解もある。ドラマ化されたみたいだけれど見ていないので、書籍を探して読んでみようと思う。謎は謎のまま残るだろうけれど、それだけ推理する余地があるということで、ぼけ防止につながりそうだ。

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